ママ一級建築士が語る 扶桑町モデルハウス|愛知・岐阜|ホームアンドニコ(安井建設)
家づくりコラム

ママ一級建築士が語る 扶桑町モデルハウス

Home&nicoで住宅営業設計を担当している一級建築士の伊藤由子です。

私自身も子育てを経験している母として、「子育て中も、その先の暮らしも心地よい家」を大切にしながら設計しています。

今回は、扶桑町モデルハウスを設計する際に大切にしたことや、一つひとつの設計に込めた思いをご紹介します。

これから家づくりをお考えの皆さまに、少しでも参考になれば幸いです。

2026.07.31

伊藤 由子|一級建築士

Home&nicoライフデザイン事業部に所属。

【保有資格】
一級建築士/一級建築施工管理技士/インテリアコーディネーター/省エネマイスター/ライティングコーディネーター 

【プロフィール】
岐阜県岐阜市出身。3児のママ。

家政学部住居学科を卒業後、建設会社、大手ハウスメーカーでの実務を経て、2006年にHome&nicoへ入社。

3人の子どもを育てながら、これまでコーディネーター、設計、営業設計として、100棟以上の住まいづくりに携わってきました。

間取りやデザインだけでなく、施工や性能、インテリア、照明など、さまざまな角度から住まいを考えることを大切にしています。

子育て中も、その先も。暮らしの変化に寄り添う住まい

家を建てるとき、今の暮らしやすさはもちろん大切です。

でも、子供が成長したら? 子供たちが独立したら?

家族の人数や暮らし方が変わっても、無理なく心地よく暮らせる家にしたい。そんな思いから計画したのが、今回の扶桑町モデルハウスです。

ご夫婦とお子様2人の4人家族を想定した、延床面積約25坪の住まい。

扶桑駅から徒歩約9分という立地を生かし、敷地内には駐車スペースを1台分確保しています。

約40坪の敷地に、南側の間口は約7m。建物の幅にも制約があるため、限られた面積をどう使うかが、今回の設計の大きなテーマでした。

そこで考えたのは、広さを追い求めるのではなく、限られた空間を上手に使い、実際の面積以上の広がりを感じられる住まいにすること。

そして、子育て中だけでなく、その先の暮らしまで見据えた住まいにすることでした。

家族が集まる場所だから、広さだけでなく開放感を大切に

家族が一緒に過ごす時間の多いLDK。

食事をしたり、くつろいだり、子供が宿題をしたり。家族それぞれが違うことをしていても、同じ空間で心地よく過ごせる場所にしたいと考えました。

今回のLDKは約16帖。

決して大きな空間ではありません。だからこそ、数字上の広さだけでなく、視線がどこまで抜けるか、天井の高さをどう感じるかが重要になります。

この敷地で悩んだのが、建物の配置です。

南側の限られた間口の中で、道路側に視線が向くのではなく、四季の移ろいを感じられる庭へと視線が抜ける空間にしたい。

そこで、庭とのつながりを意識して建物を配置し、下屋部分を生かして天井に変化をつけました。

高いところでは3.5mを超える天井高を確保。視線が上へと広がることで、16帖という面積以上の開放感を感じられるLDKになりました。

また、平屋のように生活の中心を1階に置きながら、必要な機能を2階にも持たせる「準平屋」という考え方を取り入れています。

コンパクトだからこそ、どこに広がりをつくるのか。

その答えの一つが、庭への視線と、天井の高さの変化でした。

家族が同じ空間にいながら、それぞれの時間も楽しめるように

家族がリビングに集まっていても、全員が同じことをしているとは限りません。

テレビを見たい人、食事をしたい人、少し離れて本を読みたい人。そんなとき、空間を細かく区切りすぎず、ゆるやかにつながっていると、それぞれの時間を過ごしながらも家族の気配を感じられます。

そこで、このLDKではリビングとダイニングを明確に分けすぎず、家具を配置することで空間をゆるやかにつなげました。

また、寝室や水回りなどを除き、室内建具をできるだけ設けない計画としています。

ドアが少なければ、視線が通り、空間のつながりも感じやすくなります。コンパクトな住まいでも、壁や建具で細かく区切らないことで、広がりを生み出せるのです。

もちろん、建具には音やにおい、プライバシーをコントロールする役割もあります。どこでも開放的にすればよいわけではありません。

だからこそ、寝室や水回りなど、必要な場所には建具を設けながら、家族が集まる空間はできるだけ開放的に。

家族とのつながりと、それぞれの暮らしやすさ。その両方を考えた空間づくりです。

毎日使うキッチンだから、動きやすさと見た目の両方を

キッチンは、料理をする場所であると同時に、LDKの印象を大きく左右する場所でもあります。

今回採用したのは、LIXILの「リシェル」。

実は、このキッチンの色合いを起点に、建物全体のインテリアイメージを組み立てたと言っても過言ではありません。

また、この住まいでは玄関からキッチンを通ってリビングへ向かう動線を想定しています。

帰宅してリビングへ向かうとき、キッチンの裏側など、生活感が出やすい部分が目立たないようにレイアウトを工夫しました。

毎日使う場所だからこそ、使い勝手はもちろん、ふと目に入ったときにも心地よく感じられることが大切です。

さらに、掃き出し窓の上にはFIX窓を設け、その上部にカーテンボックスと間接照明を組み合わせています。

昼間は窓から光を取り込み、夜はカーテンを伝う柔らかな光がLDKを包み込む。

同じ空間でも、時間帯によって違った表情を楽しめるように計画しました。

小さな敷地でも、外の景色を暮らしに取り込みたい

約40坪の敷地に建つコンパクトな住まいだからこそ、室内の面積だけで広さを確保しようとするのではなく、外とのつながりも大切にしました。

LDKから見える景色が道路ばかりではなく、庭の緑や季節の変化を感じられるものだったら、家で過ごす時間も少し豊かになると思います。

そこで、南側の開口を大きく取り、庭へと視線が抜けるように窓を配置しました。

一方で、窓は大きければよいというものでもありません。

光を取り込みたい場所、景色を楽しみたい場所、プライバシーを守りたい場所。それぞれの役割を考えながら、窓の大きさや位置を決めています。

例えば、キッチン前に設けた縦すべり出し窓とFIX窓。

外観のアクセントになるだけでなく、室内から見たときにも奥行きと抜け感を生み出してくれる、お気に入りの窓の一つです。

窓は、光や風を取り込むためだけのものではありません。

何が見えるのか、どんな景色を切り取るのか。その違いも、暮らしの心地よさにつながると考えています。

断熱性能だけでなく、冬の日差しまで考えた窓計画

心地よい住まいを考えるうえで、光や景色と同じくらい大切なのが、室内の温熱環境です。

このモデルハウスは断熱等級6を確保しています。

窓については、東・西・北面にLIXIL「TW」のトリプルガラスを採用。一方、南側の大きな窓には「サーモスⅡ-H」のペアガラスを採用しました。

一般に、トリプルガラスはペアガラスより断熱性能を高めやすい一方、日射熱の取り込みやすさはガラスの仕様によって異なります。

そこで、南側の窓については、冬の日差しを室内に取り込むことも考慮して仕様を検討しました。

ただし、日射熱の取得量はガラスの種類や日射取得率、庇の出、周辺環境などによって変わります。窓の性能は、断熱性だけでなく、日射の取り込みと遮蔽のバランスで考えることが大切です。

また、この地域では道路が真南に対して約45度東へ振れている敷地も見られます。

そのため、方位だけで判断するのではなく、太陽の入り方をシミュレーションしながら、冬の日差しを取り込める窓の大きさや位置を計画しました。

数値としての性能を確保するだけでなく、実際に住んだとき、どんな光が入り、どんなふうに過ごせるのか。

そこまで考えて窓を選んでいます。

寝室は、落ち着いて休める場所に

家族が集まるLDKは開放的に。

一方、寝室は、落ち着いて休める場所にしたいと考えました。

そこで寝室には、幅570mm、高さ2,200mmの縦長窓を1か所設けています。

2つの窓が組み合わさって1か所となっていますが、上下に互い違いに開くことで、1か所でも通風が可能となっています。

窓をたくさん設けるのではなく、必要な光や風を取り込みながら、外からの視線や外観とのバランスにも配慮した計画です。

また、窓の配置と開き方を工夫することで、通風を確保できるようにしています。

外観からも窓が目立ちにくく、すっきりとした印象に仕上がっている点も、お気に入りのポイントです。

寝室は、ただ眠るための部屋ではなく、一日の終わりに気持ちを切り替え、ゆっくり休むための場所。

派手な工夫ではありませんが、こうした細かな配慮の積み重ねが、住み心地につながると考えています。

子供が独立した後も、持て余さない家に

家づくりでは、子供部屋を何部屋つくるか、どれくらいの広さにするかを考えることが多いと思います。

もちろん、子育て中には子供たちの居場所も必要です。

でも、子供たちはいつか独立し、夫婦二人の暮らしへと変わっていきます。

そのとき、使わない部屋がいくつも残るのではなく、暮らしに合わせて使い方を変えられる空間があれば、住まいを無理なく使い続けられます。

そこで、このモデルハウスの2階は、約9帖の多目的スペースとウォークインクローゼットというシンプルな構成にしました。

お子様が小さいうちは広く使い、成長して個室が必要になれば、間仕切りを設けて部屋を分けることもできます。

そして、子供たちが独立した後は、趣味の部屋や書斎、収納スペースなど、夫婦の暮らしに合わせた使い方も考えられます。

最初から用途を固定しすぎず、家族の変化に合わせて柔軟に使えるようにする。

これも、将来まで暮らしやすい住まいにするための工夫です。

また、LDK上部には約6帖分の小屋裏収納を設けました。

季節用品や思い出の品など、暮らしていくうちに増えていく物を収納できるため、日常的に使う空間をすっきりと保ちやすくなります。

家の中の温度差を抑え、毎日の移動を快適に

リビングで過ごす時間が長いご家族にとって、家の中の温度差も暮らしやすさを左右する要素です。

この住まいでは、LDKの一部を吹抜けにすることで、1階と2階がゆるやかにつながる空間をつくりました。

吹抜けは、開放感を生み出すだけでなく、上下階の空気のつながりを考えるうえでも重要な要素です。

また、洗面脱衣室などの水回りは北側に集約し、寝室や階段からもアクセスしやすい位置に配置しました。

朝の身支度や入浴、夜中にトイレへ行くときなど、毎日繰り返す動きをできるだけスムーズにするためです。

エアコンは1階と2階に1台ずつ、合計2台を計画しています。

ただし、吹抜けがあれば必ず温度差が小さくなるわけではありません。実際の快適性は、断熱・気密性能、空調能力や配置、日射条件などにも左右されます。

この住まいでは、建物の性能と空間のつながりを踏まえ、家全体を快適に保てるように計画しました。

暮らしを想像することから、間取りは始まる

今回の扶桑町モデルハウスは、延床面積約25坪のコンパクトな住まいです。

限られた敷地だからこそ、何を優先し、どこに工夫を加えるのか。一つひとつ考えながら計画しました。

家族が集まる場所には、庭への視線と天井の高さで広がりを。

毎日使うキッチンには、動きやすさと美しさを。

寝室には、落ち着きとプライバシーを。

そして、子供たちが成長した後も暮らしやすいように、将来の使い方を限定しすぎない空間を。

それぞれの工夫は別々のものに見えるかもしれませんが、すべては「そこで暮らす家族が、長く心地よく過ごせること」につながっています。

家づくりは、部屋数や広さを決めることから始まるのではなく、どんな暮らしをしたいのかを考えることから始まるのだと思います。

図面や写真だけでは伝わりにくい、天井の高さや光の入り方、庭とのつながり。

ぜひモデルハウスで、実際の空間を体感してみてください。

皆さまの家づくりのヒントになれば嬉しく思います。

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